大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和39(テ)35 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理 由

上告代理人寺井俊正の上告理由について。

所論は、憲法一九条、二一条一項違反をいうが、新聞紙に謝罪広告を掲載するこ

とを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する

程度のものにあつては、憲法一九条に違反しないことは当裁判所の大法廷の判決(

昭和二八年(オ)第一二四一号同三元年七月四日大法廷判決、民集一〇巻七号七八

五頁参照)の示すところであり、右のごとき判決が憲法二一条一項に違反しないこ

とは、右判決の趣旨に徴して明らかである。しかして、本件における被上告人の本

訴請求は、上告人両名が昭和三八年八月二四日「D」に「町を毒すE暴政、与野党

問わずヒモつき」と題して報道した記事につき、上告人両名名義を以て被上告人に

対し、「貴下及び親族友人等に多大の迷惑を及ぼしたことを謝罪する」という内容

の謝罪広告を求めるのであつて、その内容は単に事態の真相を告白し陳謝の意を表

明する程度のものである。しからば、右謝罪広告の掲載を命じた第一審判決ならび

にこれを是認した第二審判決および原審判決には何等所論憲法の条項違反はなく、

論旨は採用に値しない。

よつて、民訴法四〇九条ノ三、四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判

官入江俊郎の意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

裁判官入江俊郎の意見は次のとおりである。

わたくしは、本件上告を棄却すべきものとする結論においては多数意見に同調す

るが、憲法一九条の良心の自由の法意に関する多数意見およびその引用する当裁判

所大法廷判決の多数意見には反対である。

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また憲法一九条の良心の自由は、いわゆる自由権の一種であつて、国家権力をも

つてしてもその自由を侵害されないという基本的人権の一つであることに顧みれば、

本件第一審判決ならびにこれを是認した第二審判決および原上告審判決自体の効力

としては、上告人らが、判示に従つて本件謝罪広告の掲載を任意に履行することを

期待するに止まるものであり、これを強制的に執行することは、代替執行によると

間接強制によるとを問わず、前記憲法一九条の良心の自由の要請および同一三条の

個人の尊重の趣旨からみて、許されないものと解すべきものであつて、この点にお

いても、わたくしは、これに強制執行を許すことを認めた前記多数意見には反対で

ある。

それ故、本件判決が確定したからといつて、上告人らは強制的に謝罪広告を掲載

せしめられることにはならず、違憲の問題を生じないのであつて、万一これが強制

的に執行されることとなれば、その段階においてはじめて違憲の問題を生ずるとい

うべきである。従つて、所論違憲の主張は前提を欠くものであり、本件上告は棄却

を免れない。

なお、わたくしの意見の詳細については、前記大法廷判決において示したわたく

しの意見を援用する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 松 田 二 郎

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 岩 田 誠

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